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  • 青木敏朗

ユダヤ式天才教育

更新日:2019年10月10日


 若い頃、ある歴史の本の中で、日露戦争当時、日本は戦費が足らなかったため、戦時国債を発行して戦費を調達しようと考え、当時の日銀副総裁・高橋是清が欧米各国を訪問し、国債の購入を求めたにも関わらず、なかなか交渉は実らず、たまたま在英中であった、米国のクーン・ロープ商会のジェイコブ・シフの支援を得て、戦費の4割を調達することに成功したという一文に出会ったことがある。その時、何より驚いたのは、民間の1ユダヤ人金融家が、一国の戦費を賄い得たという事実である。


 ネットで「ユダヤ人科学者」という検索語句でググってみれば分かるが、誰もが知るアインシュタインに始まり、理系の人ならば一度は耳にしたことのあるニールス・ボーアやアルバート・マイケルソン、ヴォルフガング・パウリ、ハンス・ベーテ、リチャード・ファインマンなど、信じられないほど多くの科学者の名前が画面上にずらりと並ぶ。


 現在、世界のユダヤ人人口は約1400万人、世界人口73億人に占める割合はわずか0.2%ほどに過ぎない。にも関わらず、これほど多数の天才科学者が次から次へと生まれているとは、一体、どういうことなのか。


 科学の世界だけではない。現代はユダヤの時代とも言って良いほど、その影響力には計り知れないほど大きなものがある。世界の金融、政治、経済、芸術、学問、IT技術、軍事、メディア等々、あらゆるものが彼らの影響下にあると言っても過言ではない。


 高校時代、ゲーテやトーマス・マン、ヘッセなどのドイツ文学に夢中になり、彼らの書いた本を貪るように読みふけった時期がある。そんな傑出した文学者やカント、ニーチェ、ショーペンハウアーなど世界的に著名な哲学者を輩出したドイツのような文化大国が、なぜナチスの台頭を許したのか、当時、それが疑問でならなかった。


 そんな問いを持ち続ける中で、第二次世界大戦の頃、多くのユダヤ人物理学者がヨーロッパからアメリカに亡命し、その彼らが中心となって原爆開発計画「マンハッタン・プロジェクト」が推し進められ、それが後の広島、長崎の悲劇へとつながったという史実に直面するに至るのだが、当時の私にとって、それは1人の若者が受け止めるには余りにも大きすぎる悲劇であり、その後、長きに渡って心に影響を与え続けることとなった。


 時の経過と共に私の関心は次第に「ユダヤ人は、なぜ、これほどまでに優秀なのか」という疑問へと移り変わっていき、それを調べる過程で様々な書物と出会うこととなった。


 数年前、久しぶりにユダヤ人教育に関する本を手にする機会があった。書名は「ユダヤ式『天才』教育のレシピ」(2010年出版、講談社)、日本人女性のユキコ・サター(旧姓・中村)氏と、その夫でユダヤ系アメリカ人で国際弁護士のアンドリュー・サター氏の共著である。


 この本に書かれているユダヤ人の家庭教育の秘訣とは何か。要は、家の中を本で一杯にするということである。


 知性の本質とは、言語能力そのものであると、常々私は考えている。言語とは、人間活動の本質である。そういう意味で、自宅を本で溢れさせ、子供たちを広大無辺な言語空間に触れさせて育てることを大切にしてきたユダヤ式教育が、多くの天才的ユダヤ人を生み出し、彼らが世界的な影響力を持つに至ったというのは、極めて納得のいくところである。



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