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  • 青木敏朗

晴耕雨読の塾教師が語る「読書のススメ」(5月10日付)


 新型コロナ問題が起きて早数ヶ月が経ちます。2月27日に政府から発表された休校措置以来、実質的に日本中のほぼ全ての学校がその機能を停止しています。ちょうど受験期に当たる中学3年生や高校3年生の皆さんは、「一体、来年の入試はどうなるのだろう」と不安で一杯だと思いますし、他の学年の皆さんだって、勉強を巡って色々と心配が絶えないでしょう。  報道によると、この文を書いている5月10日現在、東京や大阪など13の特定警戒都道府県を除く一部の県では、近々休校措置を解除する動きが出てきていますが、たとえ休校措置を解除しても、自粛が緩んだ途端、第1波を上回る規模の第2波が襲ってきた北海道と同じように、数週間後には休校措置の撤回を再考しなければならなくなるだろうと思います。それほど感染症に対する対処は難しいのだということを、私たちはしっかり理解しなければなりません。  しかし、教育を初めとする様々な人間活動が全て停止してしまったら、当然のことながら私たちの社会は存続出来ないし、私たち個人個人も生きていくことは出来ません。ですから、最大限に知恵を絞って本来の活動を続ける努力をしなければなりません。国や自治体、学校などは、学生の皆さんの教育を止めないよう一刻も早くオンラインで授業が出来る体制を整える必要がありますが、学生の皆さんは皆さんで、たとえ学校がなくとも、自らを律し、一日の内の決まった時間を勉強に充てる覚悟を持たねばなりません。困難な時こそ、人はその真価を問われているのです。  私は40年以上に渡って、主として中高生の皆さんの教育に携わってきましたが、学びの要諦(「要諦:ようてい」とは、肝心かなめなところ、もっとも大切なところという意味です。)は言語を操作する能力にあると考えています。言いづらいことですが、はっきり言って若い皆さんの言語力はあまりにも貧弱です。言葉の力が貧弱では、まともな学力を付けることなど到底叶いません。  ほとんど毎日のように経験していることですが、私が生徒の皆さんに質問を投げかけても、「直線」、「大きい」、「10」など、一語でしか返答しない人が大半を占めます。冗談めかして、「ストロベリー・ボーイ(イチゴ少年)やストロベリー・ガール(イチゴ少女)じゃ駄目だよ」と言っていますが、本当はとても心配しています。不幸中の幸いとでも言いましょうか、今は学校がありませんから、時間だけはたっぷりあります。この機会に徹底して本を読んではどうでしょうか。(※ネットで「青空文庫」と検索してみてください。無料のデジタルブックのデータが沢山アップロードされています。)  私には学生時代にこんな経験があります。中学生の頃、私は数学が大の得意科目でしたが、高校に入ると、「任意の実数xについて」だとか、「○○は□□が成り立つための必要条件であるが十分条件ではない」などという数学特有の日本語が当初余りよく理解できず、一時、数学が嫌いになりかけたことがありました。そのとき、「同じ数学なのに、どうして高校の数学はこんなに難しく感じるのだろう」と疑問に感じ、徹底的にその理由を考えました。そして到達した結論が、「自分には言葉の力が足りない」ということだったのです。  この問題を解決するため、早速、行動に移しました。その後の1年間、学校の行き帰りの電車の中や学校の授業の合間、朝食や昼食などの食事中、入浴中、便所での用足しの最中など、睡眠と教科の学習に充てる時間を除く全ての時間を読書に費やし、1年間で約200冊の本を読破しました。そうやって読書に打ち込んだ結果、1年後には数学に限らず、様々な科目の学力が急伸しました。この経験を通じ、私は勉強に限らず人間の知的活動、いや全ての活動の源には言語があると確信するに至りました。結局のところ、知性の本質とは森羅万象を言語によって解釈することに他ならないのです。そんな高校生の頃から数えて早40数年が経ちますが、今でも読書は私の生活にとって必要不可欠のものとなっています。  最初の話に戻りますが、新型コロナの問題は、到底、一朝一夕で解決できる問題ではありません。学校が正常な業務を行うことが出来ない状態は、今後も当分続くと思います。ひょっとすると来年の入試すら行えないかも知れません。でも、私は何も心配する必要はないと思っています。若い頃に読書の習慣を身につけ、高度な言語能力を獲得すれば、たとえ学校に行かなくても自己教育をすることで高い知的能力を獲得することは十分可能です。また、それが出来れば、本来、学校に行くことさえ必要ではないと思います。  「勉強すること」イコール「学校に通うこと」ではありません。学校に行っていても、満足に勉強していない人は沢山います。逆に、本人に強い意思と覚悟さえあれば、たとえド田舎に住んでいても、今はネット環境さえあれば最先端の知識を身につけることさえ可能です。就職が心配だって? 仕事なんて自分で作れば良いのです。自慢じゃないですが、私は学校を卒業して以来、1日とて会社等に就職したことがありません。勉強だって、ほとんど独学でやってきました。要は自分の人生に本気でコミットするかどうかです。若い皆さん、今こそ腕の見せどころです。是非、頑張ってください。  そうそう、言い忘れましたが、皆さんは南方熊楠(みなかたくまぐす)という人物を知っていますか。彼は在野の学者で、私が最も尊敬する人物の一人です。是非、一度、彼のことを調べてみてください。学校に頼らず自ら学ぶ上で色んなヒントが得られると思いますよ。 ​               2020年5月10日 青木塾塾長 青木敏朗    


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