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  • 青木敏朗

学力格差は、なぜ生まれるか

最終更新: 2019年10月10日


 「学力格差はなぜ生まれるか」と問われたら、恐らく大半の人は能力差をその理由に挙げるかも知れないが、長年に渡って中学生や高校生の教育に携わって来た私の目からすると、能力云々(うんぬん)以前に、学習意欲の点で子ども達の間に途方もない格差があり、それこそが学力格差の原因になっているように思えて仕方がない。


 私の身近にある現状を少しお話ししたい。私の塾には市内の複数の公立中学の生徒達が学んでいるが、彼らを通じて聞こえてくる地元の中学校、特に規模が比較的大きな学校の子供たちの学習意欲は一般的に驚くほど低い。


 ある中学3年生の生徒によると、彼女が中学に入学して間もない頃、既に授業中寝ている生徒が10人ほどいたそうだ。最近、彼女に改めて現状を尋ねると、クラスの中で授業を真面目に聞いている生徒の数は10人ほどに過ぎないという。本人達はどう考えているのか分からないが、知れば知るほど、これは恐るべきことだと思う。


 今ほど技術が加速度的に進んでいる時代に、年端もいかない中学生にして、既に学ぶことに意義を感ぜず、努力することを放棄しているとするならば、恐らく彼らが大人になってから、十中八九、高い収入を得られるような職業には就けないだろう。いやそれどころか、生涯に渡って慢性的な失業状態に陥る可能性すら十分に考えられる。


 想像するに、彼らは小学生時代、何かがきっかけで(例えば、九九や分数や小数、割合など)勉強につまずき、そのまま「自分は努力しても無駄だ」と思い込んでしまったのだろう。もしそうだとしたら、余りにも勿体ないことだ。


 私の塾は、世間からは、一応、「進学塾」と思われているようだが、実際には、塾にやって来る子ども達の中で、小学校時代に身に付けるべき基礎学力が十分に身に付いていない子は少なくない。中には、分数や小数の計算すら十分に分かっていない子も珍しくないが、果たして、この子達は勉強しても無駄なのかというと、決してそんなことはない。


 塾のホームページのコーナー「卒業生たちの軌跡」を、是非、ごらん頂きたい。彼らの中には、入塾時、小数や分数の計算すら出来なかったにも拘わらず、高校は地元でも有数の進学校に入学し、卒業時には圧倒的に高い点数を取って学年トップになった事例がある。「それは特別なケースだろう」という声が聞こえてきそうだが、決してそうではない。「卒業生たちの軌跡」を注意深く見てもらえば分かると思うが、入塾時、学力が十分ではなかったにも拘わらず、何年にも渡って真面目に勉強に取り組んで、努力を積み重ね、卒業時に学年トップやそれに準ずる成績を取るようになった事例は、それこそ山のようにある。


 つまり、小学生時代に勉強が苦手だったとしても、中学や高校で勉強が分からないとは限らないということだ。私の目からすれば、中学入学の段階で勉強をあきらめてしまっている子ども達は、磨けば光る宝の原石を持ちながら、みすみすそれを無駄にしてしまっているように思えて仕方がない。


 十代で最大の課題は、「努力をすれば能力は伸ばすことが出来る」という経験することである。若いときに「自分はダメだ」、「努力しても自分は伸びない」と一旦思い込んでしまったら、悪い意味で、それは一生、その人の人生に影響を与え続ける。逆に、努力をすることで、それまでの自分を乗り越え、新たな自分に出会う経験をすることが出来れば、その後の人生で出会うであろう別の困難にも正面から向き合うことが出来るだろうし、それを克服することで一層有能な人間に成長することさえ可能となる。


 勿論、勉強が苦手だった子が一朝一夕で勉強できるようにはならないが、努力をいとわなければ、少しずつでも前に進むことで、それが積もり積もって、ある時、後ろを振り返ったら、随分と勉強が分かるようになっていたということは、ごく普通にあることだ。覚悟と努力さえあれば人は必ず伸びると、私は信じている。

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